第72回関東甲信越静学校保健大会参加報告

目黒区学校歯科医会  清田 俊一

1.期日   令和3年8月5日(木)

2.開催地  茨城県水戸市
  配信会場 ザ・ヒロサワ・シティ会館 第1集会室~第6集会室 

3.目的  
幼児・児童・生徒の心と体の健全な発育・発達を目指し、健康教育の当面する課題について研究協議し、その具体的な方策を究明するとともに、健康教育の充実と発展に資する。

4.主題
  子供の命と安全を守り、夢や可能性を育む学びの健康教育を目指して
        ―コロナ禍における学校保健の在り方

5.主催
   茨城県教育委員会、茨城県学校保健会、水戸市教育委員会、(公財)日本学校保健会

6.内容
   全大会
   (1) 開会式
      ・開会挨拶     大会実行委員会教育長 小泉 元伸 氏
茨城県学校保健会会長 鈴木 邦彦 氏
      ・来賓挨拶     公益財団法人 日本学校保健会専務理事 弓倉 井 氏
      ・開催市挨拶    水戸市教育委員会教育長 志田 晴美 氏
      ・次回開催市挨拶  神奈川県教育委員会 松野 明 氏
      
   (2) 特別講演
      ・演題   「空気を読むを科学する
                  ―微表情から察する子供の感情と空気―」
      ・講師    株式会社 空気を読むを科学する研究所 代表取締役 清水建二 氏

      ・講演内容
        ①表情に注目しよう
        1)表情からわかること
          幸福、軽蔑、嫌悪、怒り、悲しみ、恐怖、驚きなどの万国共通、7つの感情と羞恥、恥、罪悪感、畏れ、誇りなどの純万国共通の表情がある
        
2)マクロ表情と微表情
 表情には嫌悪感や不安など感情を我慢するときに出る微表情とストレートに出るマクロ表情がある

②表情観察から感情のニーズを察しサポートしよう
1)子どもの微表情を読み取り、感情に対してどの様なサポートが出来るか。

2)ミスに対する子どもの反応
 ミスをした時の子どもの感情は怒り、恐怖、羞恥、これに対するニーズは安心や安心させてあげることが必要

3)子どもの視点と感情
 恥には謝罪を促し、怒りには理由を聞いてあげること

③まとめ
 表情の違和感を覚えること。たとえマスクをしていても、軽蔑以外の表情を読み取ることはできる。

7.班別研究協議会
  (1)課題及び協議内容
   【第1班】  学校経営と学校保健
    課題    「教育目標具現化を目指す学校保健」
    協議内容  ①児童生徒の豊かな心と、たくましく生きる力をはぐくむ、組織的な学校保健活動の在り方
          ②家庭及び地域社会との連携による学校保健委員会の在り方
【第2班】  健康教育
 課題    「生きる力をはぐくむための健康教育及び自分の健康や行動に責任をもつ薬物乱用防止教育」
 協議内容  ①豊かな心をもち健康な生活を実践する児童生徒の育成を目指した健康教育の進め方
       ②自分の心や体を大切にし、自分の健康や行動に責任をもつことの大切さを理解できる薬物乱用防止教育の在り方
【第3班】  いのちの教育
        性に関する指導・がん教育
 課題    「相手を思いやり望ましい人間関係を構築する性に関する指導及びいのちの大切さについて考えるがん教育」
 協議内容  ①家庭、地域と連携し、発達段階に応じて計画的に実在する性に関する指導の在り方
       ②がんに関して正しく理解し、健康といのちの大切さについて考えるがん教育の在り方
【第4班】  学校歯科保健
 課題    「生活習慣病の予防等を目指した歯・口の健康づくり」
 協議内容  ①歯と口の健康づくりの日常化を目指す学校歯科保健指導の在り方
       ②家庭及び地域社会との連携による歯科保健活動の在り方
【第5班】  学校環境衛生と安全教育
課題    「快適な学校環境づくりと実践力を高めるための安全教育」
協議内容  ①安全で快適な学習環境づくりを目指す学校環境衛生活動の進め方
      ②家庭や地域社会と連携し、児童生徒が自らの安全を確保する能力や態度を育てる安全教育の進め方
(2)その他の関係会議
   ・班別研究協議会運営会議
   ・職域部会

 8.班別協議会参加報告
    第4班(学校歯科保健)に参加
     〇歯・口の健康づくりの日常化を目指す学校歯科保健指導の在り方
       ~自ら歯・口を大切にする児童を育てる歯科保健活動の実践~
          群馬県高崎市立塚沢中学校   養護教諭  川浦 民子 氏
(1)実践の概要
    ①定期健康診断(歯科健診)
     (A)学校歯科校医との連携
     (B)事前の準備
     (C)健診当日の実践
     (D)事後の活動
     (E)令和2年度からの工夫点
    ②保健だよりでの情報発信
     (A)歯科健診に関わる機会(保健だより6月号)
     (B)「いい歯の日」にちなんだ機会(保健だより11月号)
    ③生徒保健委員会の活動
     (A)健康チェックカード
    (B)歯・口の健康週間に向けた啓発標語づくり
    (C)新型コロナウィルス感染症禍での委員会活動
   ④学校保健委員会
(A)事前準備
(B)当日の実践
(C)事後の活動
⑤教科との関わり
 (A)家庭科
 (B)保健体育
 (C)食に関する指導(給食)
⑥日常の実践と様子
⑦保護者や地域との連携

   (2)成果と課題
    ①成果
     (A)特別に「歯・口の健康」について時間を設定せず、教科・学校行事・生徒保健委員会の活動を常に関連付けることで、「歯・口の健康」を意識する機会を増やすことができた。
(B)「歯・口の健康」は、むし歯がないことではなく、感染症予防を始めとする全身の健康につながること、さらに学力向上・体力(技能)の向上にも関わることを意識づけられた。生徒たちが自分自身の健康に興味・関心を持つことができ、日常的に「健康習慣の実践=歯・口の健康」につなげることができた。
(C)令和2年度からの学校保健活動は、新型コロナウィルス感染症対策を取りつつ、3密回避などを実践しながらの活動となったが、「定期健康診断」に対する捉えや「生徒保健委員会の啓発活動」の変化が効果的なものになったと実感できた。
②課題
 (A)定期健康診断をきっかけに、生徒・教職員の歯科に関する知識と関心を高める工夫を継続すること
(B)生徒だけでなく、家庭への情報発信が確実に伝わっているかを検証すること
(C)校区小学校との連携強化

     〇家庭及び地域社会との連携による学校歯科保健指導
       ~持続的に歯や口の健康づくりに取り組める児童の育成を目指して~
          東京都清瀬市清瀬第七小学校   主幹教諭  須山 望 氏
(1)本校の歯科保健活動
    ①体育科保健領域での歯科保健指導
    ②特別活動における歯科保健指導
     (A)学校活動における歯科保健指導
       ア)指導例「カミカミ名人になろう」
     (B)児童会活動
       ア)集会発表
       イ)歯みがき啓発活動
       ウ)歯みがきキャラクター作成
       エ)あいうべ体操の啓発
     (C)全体での歯みがきタイムの設定

    (2)家庭及び地域社会との連携
     (A)学校歯科医、清瀬市歯科衛生士との連携
    (B)保護者参加型の歯科保健活動
(C)定期健康診断後の早期受診に向けての活動
   
    (3)成果と課題
     ①成果
     (A)学校歯科医や地域の歯科衛生士との連携で実施した歯科保健活動や、関係機関との連携・協働による取り組みにより、児童や保護者の口腔衛生に関する意識や態度が向上した。
(B)教育活動全体で取り組んだ歯科保健活動によって「食べたらみがく」という歯みがきの基本的習慣が定着し、その後の児童の行動変容につながった。

    ②課題
     (A)様々な歯科保健活動の取り組みにより、丁寧に歯をみがける児童は増えたが、健診で一部の児童がみがき残しを指摘される傾向がある。課題のある児童には個別指導など引き続き自分の歯に合った正しい歯みがきができるよう個に応じた指導が必要である。
(B)むし歯や歯肉炎だけではなく、歯や口腔の機能や病気についても児童に深く理解させ、自らの歯と口の健康づくりに持続的に取り組める力の育成を目指して、歯科保健指導のさらなる充実を図る必要がある。

(5)まとめ
    歯や口の健康づくりに関する取り組みは、むし歯保有率や受診傾向から成果が見えやすく、口腔状態から得られる情報は非常に多い。歯科保健指導後に指導内容が児童の実態に適していたか評価し、次回に向けて再計画していくことが継続的な歯科保健指導の充実につながる。
    また、児童の体や心の健康を守るために近隣の医療機関との連携も大切である。医療機関には「医療コーディネーター」等の専門員が常在しており、MSWやSSW、PSWなどと連携し児童の早期受診や、事後指導など学校歯科保健活動の充実を図りたいと考える。

     〇指導助言
     〈小学校〉 
  ①朝だけでなく寝る前の歯みがきの重要性
  ②口腔機能発達不全症として口唇閉鎖不全症の子どもを見かけるが口呼吸により、
口臭、歯肉炎、歯並び、アトピー性皮膚炎、風邪、インフルエンザ等の感染症になりやすく、集中力低下や食事に時間がかかることも起こり、なるべく早い時期に対処して減らしていきたい。
③全体の30%を口唇閉鎖不全症の子どもたちが占める。地域性に有意差はなく、成長とともに増加傾向にあるため、保護者や教職員が気づいたときに指導する。

〈中学校〉
①感染対策として歯科健診時の工夫としては、ダブルミラーやグローブを二重にする。
②年齢に応じた歯みがき指導が必要。
③歯周病予防や噛むことの重要性を知る大切な時期である。
④歯・口の外傷の応急処置の必要性。

2021年10月27日